知人から頼まれて「発達障害を支える技術」という同人誌に原稿を書く事になりました。タイトルは「無くさない技術(仮)」。順調に執筆が進めば、2019年9月22日に池袋で開催される技術書典7で発売されるはずです。
一度にまとめて書こうとすると締切(9月10日)までに上がらない可能性があるので、少しずつ書いてブログに公開し、みんなの意見を聞きながらブラッシュアップしていく予定です。
メール( uchida@mediaengine.jp )やTwitter(@sidodtv)やfacebook(tsutomu.uchida)で感想をいただけると嬉しいです。
※ ※ ※
無くさない技術というと、様々なライフハックや対策グッズを紹介したりすると思うでしょう? でも、同人誌を読む人がそんな情報を求めているでしょうか? 否です。
AMAZONや書店、まとめブログなどで手に入らないニッチな情報や、ごく一部の人しか分からないであろう視点で書かれた情報こそが、同人誌で求められる内容です。
しかし、今まで商業出版されている本の中で「これは素晴らしい!!!」と絶賛できる本が、僕の観測範囲の中で1冊だけありました。借金玉さんの『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』という本です。少し遠回りになってしまいますが、この本の事を紹介させて下さい。多くの健忘家の方に救いの手をのべるまるで聖書の様な本です。
(以前、僕のブログでも軽く紹介しています)
借金玉さんは現在30代の不動産関係の営業をしている男性で、もちろん発達障害(ADHD)の当事者です。この本を読んでいる人にADHDの説明は不要かと思いますが、借金玉さんの場合は、「不注意」「多動性」「衝動性」の他にもASDの特徴である「感覚過敏」「自己ルールへの強烈なこだわり」を一緒に持っているそうです。要するに「大抵の人は混ざっている」という事です。
僕が「自分は軽度の発達障害だと思っていたけど、ちょっと違うかもしれないなぁ」と思い始めたのは、借金玉さんの本を読んで以降の事です。借金玉さんはとにかく生存が困難な人です。上司との面談中に寝てしまうどころか、上司の顔もよく覚えられない。実印を無くす、ガス代を払い忘れて止まる、酒のツマミに睡眠薬を飲む、などなど。よくぞ死なずに社会人として生活してこれたなぁと思うような状態です。だからこそ、彼が生き延びる為に編み出したノウハウは、とんでもなく実用的なのです。
ここで彼が本の中で一貫して主張している三大原則を紹介します。それは、
1:集約化(ぶっこみ)
2:一覧性
3:一手アクセス
です。
そしてこの中で突出して重要なのが1の集約化(ぶっこみ)です。主に特定のカバンや箱などに必要なものを「すべて」ぶっこんでしまう、というテクニックです。
借金玉さんは、物が消える事を「神隠しにあう」「部屋にマイクロブラックホールがある」と表現するのですが、この本を読んでる人にとっては「まさにコレ!」ですよね。昨日まであそこにあったはずの物が、なぜか突然消失してしまう日常。たった1個の小さな失せ物を探すだけで、夜が明けてしまう徒労の日々(しかも滅多に見つからない)。そんなツライ毎日とオサラバする為の方法がこの集約化(ぶっこみ)です。
必要な物が全部そこにあるという安心感。これで家中全部探し回らなくても良くなるのです。必要なものが必ずそこにあると断言できるだけで、世界は救われるのです。
もちろん代償はあります。それはカバンが巨大化し重くなる事です。僕の知人で毎日20kg以上あるカバンを持ち歩いているADHDの女性がいます。でも重さなんて、物を探す苦労に比べたら大した事はありません。むしろその重さが、安心感につながります。
ちなみにカバンだとどこかに置き忘れてしまう可能性があるので、僕としてはカバンはオススメしません。リュックタイプのものにするべきだと思います。スーツにリュック、ワンピにリュック、着物にもリュックです。絶対のオススメです!