病院には色が無い

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内視鏡検査の待ち時間に、待合室の向かいに居たお婆さんが話しかけてきた。

今、毎日4本点滴をうたなくてはいけなくて、それだけで一日が終わってしまうのだそうだ。点滴の管が刺さっている以外は見たところは元気そうな話好きのお婆さん。数日前に腸から出血があり入院したのだという。点滴をしている間は大人しくしているしかない。歩けるのはせいぜい病院の廊下程度だ。

少し汚れたその廊下を歩くと、暖簾の隙間から病室の中が見える。ベッドには、まだ元気そうな人もいれば、横たわったまま微動だにしない人もいる。なぜか日本の病室は、相部屋が標準だ。

外とは全く違う時間が流れている室内で、気になったのは「色」がない事。みんな水色の、恐らくはレンタルのいわゆる病院服を着ている。そこには外見で個性を主張できるものはない。もっといえば、床も壁もカーテンもシーツも、あまりにも淡泊な色をしていて、塩気の効いていない料理のようだ。

ああ、ここが色にあふれていたら、どんなにか人々が元気になるだろう?

きっとどこかにそんな病院はあるのだろうけど、少なくとも僕の目の前では、彩度の低い空間に、人が横たわっていた。

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