別府北浜にある大分空港行きバス停には、今でも「切符売りのおばさん」が立っている。
おばさんは肩かけカバンの中から切符を出して売ってくれる。
このバス停に切符の自販機は無い。
僕が知っている中で、今も人間が巡回し切符を売っているのは、日本でここだけだ。
今回はうっかり空港で往復切符を買ってしまったので、おばさんから切符を買えなかった。
「いつもこのバス停で会うのを楽しみにしてるんですよ」
バスが到着するまでの数分間、世間話をした。客は、僕ひとりだ。
以前来た時は、おばさんがバスガイドとして働き始めた頃の話をしたような気がするが、今回は時間がないので深い話はしなかった。
停留所のディスプレイには、次のバスが1分遅れて到着すると表示されている。すぐ横にあるスタバでは、モバイルオーダーでコーヒーの注文が入る。
昔ながらの温泉地も、変わらないようで少しずつ変わっていく。
そんな場所でおばさんは、もう何十年もバスの切符を手で売っている。
少し前、バスにQRコード決済が導入されたが、なぜかおばさんは居なくならない。
「どうかお元気で」
おばさんはかなり高齢だ。正確に言えばおばあさんなのだ。次もまた会えるか分からない。
まぁ、旅とはそういうものだ。
おばさんと数分間、人生を共有できて良かった。
