「30万円と50万円の仕事」の広告は、なぜ炎上したのか?

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30万円と50万円の仕事の電車広告が炎上している。シンプルな文字だけの広告だ。

毎月50万円もらって毎日生き甲斐のない生活を送るか、
30万円だけど仕事に行くのが楽しみで
仕方がないという生活と、どっちがいいか。

研究機関 研究者/80代

そりゃ炎上するよね、と思うのだけど、なぜこの広告に腹が立つのかふと考えてみた。
参考までに、このコピーを作ったのは電鉄会社ではなくブランディング会社という事のようである。
https://blogos.com/article/383274/

1:お金じゃなくて、本当に好きな仕事をする時でもツライ

僕はTVディレクターとWeb制作とシェアハウス運営という3つの仕事をかけもちしているのだけど、どれも好きでやっている。というか、精神が子供なので逆に好きな仕事じゃないと続けられない。本当に好きな仕事なんだけれども、同時に大変過ぎたり自分の才能の無さに気づいてしまったり、なんで好きな事を仕事にしてしまったのかと呪うような気持ちになる事もままある。
多くの人はそんな気持ちをかかえながら、好きな仕事、あるいはそんなに好きでも無い仕事を続けて日々を生きている。片方だけの気持ちを逆なでするならともかく、両方の気持ちを逆なでするなら、そりゃ炎上するわな。

2:30万円とか50万円とか、お前の価値観を押し付けてくるなよ

世の中には月収30万円以下で働いている人が沢山いる。30万円ももらっているならオレ/ワタシよりずっともらっているじゃないか、そういう人が沢山いる中で30万円の仕事を馬鹿にするなら、そりゃ炎上するわな。
逆に50万円以上もらっている人も沢山いる。そういう人からすれば、50万円で満足してるなんて、お前努力が足りなすぎるだろう、と感じる。こっちは炎上しないかもしれないが、ムカッとするわな。
つまり30万円とか50万円とか誰の基準で判断してるんだよ、それ、お前の基準だろう? 世界はお前の会社を中心に回ってるんじゃないんだよ、という気持ちになる。そりゃ炎上するわな。

3:そんな会社、すぐに辞めちゃえよと思うけど、それを言えない自分がいる

炎上商法でないのなら(炎上商法だったとしても)、こんな広告の企画が通ってしまうなんて、ちょっとマトモな会社ではない。誰かがこの企画にNGを出さなくてはいけなかった。NGを出す会社でなければいけなかった。けれども、大きな会社を変えるのは容易ではない。
だったら今の御時世、そんな会社はさっさと辞めて転職しちゃいなよ、と思うのだけど、イチイチそれを言いにいくのは面倒臭いし、そんな事できないのは百も承知だ。だから、モヤモヤが消えずに残ってしまう。つまり不満のぶつけ先がない。だからみんなSNSで文句を言ってしまう。そりゃ炎上するわな。

僕なりの結論:作った人の顔が見える広告にしよう

1,2,3といくつか炎上する原因を挙げてみたけれど、どれが一番罪深いかといえば僕は3だと思う。炎上して大問題になっていると言うけれど、それはすなわちSNSに不満の声が沢山投稿されている、という事に他ならない。間違っても国会前でデモが起きている、という事ではない(それは炎上ではなく社会問題だ)。

この広告では、不満のぶつけ先がない→SNSに投稿という、シンプルで分かりやすいルートが見事に確立されてしまっている。逃げ場の無い満員電車の中であの広告が頭上をヒラヒラしているのだから、通常より強くその行動は促進される。

今回は元々は個人(とある研究者)の発言だったものが、電車内に電鉄会社の広告として掲載されてしまったという特殊性もあり、電鉄会社の意見として捉えられてしまった事も大きい。これが、著名人(や発言した当人)が顔出しして語っている広告なら、かなり違った展開になったのではないか。少なくとも発言者がその責を負う/負わされる部分が出てきて、不満のぶつけ所が変わってくるはずだと思う。また、ビジュアルとして顔があるだけで、色々なものが読み取れてくる。担当者としては、それを削ぎ落としたかったのかもしれないが。

複雑な社会性を背負った言葉を、短時間に文字だけで説明するのは難しい。匿名の発言者の言葉であれば、尚更だ。ちょっと言葉足らずだけど、発言した人や、作った人の顔の見える広告にするのが、今回の場合は良かったと思う。そんな時代な気がする。

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