8月いっぱいで閉園する東京都練馬区にある名物遊園地「としまえん」。大正15年オープン、94年前の開園当初は今のような遊園地ではなく、「心身の鍛錬」と「文化を育む」場所だったという。
僕は「としまえん」には、大人になってからしか行った事はなく、5回以上は行っているけど10回は行っていない。記憶が確かなら2人きりのデートなどでも行った事はなく、一番の思い出は、みんなでとしまえんで花見をした事だ(花見プランというのがあった)。

そんな訳で、それほど思い入れがある訳ではないが、やっぱり閉園前に「人生最後のとしまえん」を堪能してみたい。そこでネットで募り、平日の日中に友人6人で行ってみる事にした。

11時に現地集合。チケットは完全予約制だけど、引き換え場所はかなりの混雑。

まずは現役では世界最古ともいわれるメリーゴーラウンド「カルーセル エルドラド」。1時間待ちだった。木製で、ところどころ塗料がはげている。乗り物も上下に動いたりはせず、ただグルグル回るだけ。動き始める時は「ギギー」っと木の軋む音がする。

いつも「古い・ボロい」と思っていたけど、乗るのもこれが最後かと思うと不思議な味わいがある。人間の感覚なんて、適当だ。

続いてはプール。夏のとしまえんは、なんといってもプール。流れるプールとハイドロポリスを堪能。あとはオマケで波の出るプールも。

閉園間近とはいえ悲壮感は全くないのだけれど、浮き輪が安売りセールされていて、ここだけ微妙に哀愁を感じた。

その後は、参加メンバーの1人が思い入れがあるという事で、和風のお化け屋敷に入ってみた。人形が動いたり、プシューと空気が出てきたりする予想通りの展開で、大して怖くないのだけど、子供はガン泣きしていた。幼稚園児ぐらいが一番泣いていて、赤ちゃんや小学生はあんまり怖くないようだった。

お化け屋敷でも新型コロナ対策をやっていて、お化けとコロナ、どっちが怖いのだろうかなどと考えてしまった。。。

あとは乗り物をいくつか。新型コロナの影響で一度に乗れる人数を制限しているため、どこもメッチャ行列していた。
暗くなった後にまばゆく輝くカルーセルエルドラド(黄金郷)を眺めて、一日が終了。パイレーツ(バイキング)に乗れなかったのは残念だけど、あとはだいたい回れて満足。自分なりに良いお別れが出来ました。
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「としまえん」は閉園後、ハリー・ポッターのテーマパークに生まれ変わるという。
ディズニーランドやUSJは「映画」をテーマにしたテーマパークで、複数の作品でその世界が成り立っているけれど、ハリー・ポッターは「単品作品」のテーマパークだ。当然、その作品を観たり読んだりした事がある人にしか楽しめない。つまり「好きな人には刺さるけど、興味ない人は対象外」という仕組みになりがちな仕組みだ。これをハイコンテクスト(文脈)という。
ハイコンテクストなテーマパークは、刺さる人は沢山のお金を出してくれる。グッズも色んな種類の物が売れるだろう。人口減少時代において、この方向性は正しいと思う。
その一方、「みんなで」遊びに行くのが難しい。ハリー・ポッターはかなり有名な作品である事は間違いないが、全国民が観ている作品という訳ではないからだ。ふと思い立ってダラダラ遊びに行って、誰もがそこそこ満足して帰ってくる、という、いわゆる昔からのローコンテクストな「遊園地」には「みんなで」遊びに行ける良さがあった。
そういえば、昭和の時代によくあった「デパートの大衆食堂」もこれと似た感じだ。大衆食堂に行けば、それぞれが好みのものを食べ、みんなで満足して帰る事が出来る。あの懐かしい感じが「としまえん」にはあったのだ。
ローコンテクストな「遊園地」そのものは、東京圏だとサマーランド、富士急ハイランド、西武園ゆうえんちなどがあるけれども、いずれにしても都心からフラっと行くは遠い。「よ〜し、今日は遊びに行くぞ!」と気合いを入れないと行くのは難しい。
東京には花やしきやラクーアなどの「遊園地」もあるけれど、残念ながら規模が小さい。「としまえん」は都心におけるローコンテクストな遊園地の最後の砦だったのだ。時代の流れとはいえ、としまえんが消えてしまうのは惜しいなぁと思い、こうして書き留めておく事にした。
